本屋で“この本を売りたくて私は書店員になりました!”という熱いメッセージカードを見かけたのが気になって、早速読んでみた。
実を言うと、あまり期待はしていなかった。だって「お母さんと暮らしている女の子のお話」と言うと江國香織(『神様のボート』)の印象が強かったし、同じ作者の『夏の庭』のイメージも重なって「なんだか二番煎じを読まされそうな既視感」があって、そのイメージにひっぱられるように読み始めた。
なんだか暗いなあ、というのが最初の感想で、「玄関から見える何々」とか「どっち側に階段があって」とかの説明くさい描写を何度も読み返しては物語の舞台である「ポプラ荘」を頭に描こうとしたけれどうまくいかず・・・。自分の知っている古いアパートの(トキワ荘とかめぞん一刻みたいな)イメージと階下には大家のおばあさんだけ、庭にはポプラというのがどうしても結びつかず、「しわくちゃなおばあさんの顔」だけはしっかりイメージできたもんだから、物語は序盤から自分の脳ミソの出来の悪さを嘆く、苦痛の滑り出しとなってしまった。
・・・のだけれども。主人公が「オサムくん」と出会ったあたりから物語はクルクルと展開し始める。彼女が子供心に感じたことが彼女なりに、断片的に描かれながら、終盤近くの「クライマックス」でそれまで厚く立ち込めていた霧みたいなものがスーっと晴れて(これはたぶん主人公と同じ感覚を疑似体験しているのだと思う)、物語は静かに幕を閉じる。
『夏の庭』でも老人が描かれていることもあって「生と死」がテーマにされそうな作品だけど、私はどちらかというと2作品とも「分別のある大人は子供にどう接するべきか」ということが切切と説かれているような気がした。
そういえば自分が子供時代を過ごした家には、柿の木と夾竹桃があったっけ。どちらも手入れ不足で地味な木ではあったけど、そういうことを思い出せる記憶があるってのはありがたいことだ、と初めて実感できたな。この本のおかげで。
アツい推薦コメントを書いた本屋の店員さんに、また売りたくなるような本との出会いがありますよう。
『ポプラの秋』 湯本 香樹実
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